統合失調症の脳変化

かつて、統合失調症の発症は「親の育て方に原因がある」という説が存在しました。現在はそういった説は否定されています。

1987年になり、統合失調症の脳機能障害に関し、Weinbergerらは神経発達障害仮説を提唱しました。これは、母親の妊娠期や周産期の神経病理(たとえば周産期の脳ダメージや妊娠中のウイルス感染など)がその後の成長期の中枢神経系の発達に影響を与え、その結果として精神機能の異常が発症するというものです。

脳の形態変化(容積変化)の研究からも、この仮説は、前頭葉・側頭葉の灰白質減少、側脳質拡大などが発症早期から起こっていることが検証によって支持されているとされています。このため、今度は周産期の原因論が登場した感があります。

これに対して最近の分子生物学的研究やニューロイメージング研究が発展したことを受けて1999年Lieberman,JAらは統合失調症の新しい病態仮説として神経変性仮説を提唱しました。

これは、統合失調症の疾患過程において「神経発達異常の素因はあるが、統合失調症の病態生理は発症後も進行する」というものです。発症後にみられる不可逆性の障害とは

1.症状悪化に伴う神経伝達物質(特にドパミンとグルタミン系の過剰興奮)の異常
2.上記による神経細胞の傷害
3.これらの再発、再燃というプロセスで神経変性が生じる

というものです。

Lieberman教授の仮説はここでご覧ください↓
http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6T4S-44MFJ4Y-6&_user=10&_rdoc=1&_fmt=&_orig=search&_sort=d&view=c&_acct=C000050221&_version=1&_urlVersion=0&_userid=10&md5=7afca2c00cf7dbf7f06db84bb11e8eea

一方、抗精神病薬の投与による脳構造の変化が指摘されています。オランザピンとハロペリドールの二重盲検試験では、初回エピソードの統合失調症患者にオランザピンとハロペリドールを2年間投与したところ、オランザピンはハロペリドールよりも灰白質の容積減少が少なく、認知機能改善効果が高かったとされています。

このような研究からも、発症してから早期に抗精神病薬での治療を行うことの重要性が指摘されると思います。

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(wrote:財団法人 住吉病院