特別講義・統合失調症の認知機能障害
- 2007.12.28
- 日記
活動療法部ほかのスタッフの方からリクエストをいただいて「統合失調症と認知機能障害」についての特別講義をしました。
統合失調症において、認知機能障害は、幻覚や妄想といった「陽性症状」、感情の平板化や自閉といった「陰性症状」とは別の症状群を形成しており、その社会的な予後を大きく左右される、統合失調症の基本的な障害であるということができます。これは薬物療法が始まる前のE.ブロイラーやE.クレペリンといった精神病理学の祖ともいえる人々の記載している病像にも表されており、薬物療法による脳機能の低下によるものでもありません。
統合失調症においては、読むことや、長く体験した事実の記憶は障害されませんが、学習や問題解決は重度に障害されています。また、「情報を短期的に頭の一部にとどめておく」ワーキング・メモリーも中等度に障害され、このことによって社会生活に大きな困難を生じることが知られています。
知能が低下するのではなく、経験から学習することが少なくなるため、同じ過ちを何回も繰り返して、自己評価が低くなってしまうことも確認されています。こういった、認知機能障害という側面から、患者様の行動を観察すると「腑に落ちる」ことが多いとスタッフの方は口をそろえていました。それおぞれの患者様への作業療法やトレーニングを認知機能のどの部分に意識を向けながら行っていくのか、がこれからの統合失調症の方のリハビリテーションの質的向上のために必要であると思われました。
そのための簡便な認知機能障害のツールとしてのBACS(Brief Assessment of Cognition for Schizopphrenia)が有用であると思いました。新しいリハビリテーションの流れにのって、より有用な支援をご提供するための努力を続けていきたいと思いました。
(wrote:財団法人 住吉病院)
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