自閉性障害を持つ子どものための治療や教育に関して、ノースカロライナ大学を中心として実践されているTEACCH:Treatment and Education of Autistic and related Communication handicapped Children (自閉症とその関連する領域にあるコミュニケーション障害の子どもたちの治療と教育)プログラムというものがあるそうです。
自閉症が高次脳機能の文脈で言う認知障害であることはいまや専門家の間では異論はないように思えますが、TEACCHでは「認知障害あるという特性を理解して、自閉症を持つ子どもの弱点を補うような認知的配慮をする」という、当然といえば当然の考え方が基盤になっているようです。
TEACCHの基本理念
- 自閉症理論よりも実際の子供の観察から、個別の特性を理解する
- 子どもに新たなスキルを教えると同時に、その弱点を補うように環境を変えることで適応能力の向上をはかる
- 個別の教育的プログラムを作成するために正確な評価を行う
- 構造化された教育
- 認知理論と行動理論の重視
- 現在持っているスキルやストレングスを強調するとともに弱点も認める
- 地域社会に基盤をおいた永続的援助
認知行動療法に似ている感じもありますが、本来のTEACCHの考え方は、きわめて柔軟で、人それぞれに、同じ人でも状況によって臨機応変に対応していくべきとされています。間違えてはいけないのは「構造化=図表などで行動指標を示す」ことがTEACCHの本質ではないということです。さまざまな個性があって当然の人たちに対して、その認知機能特性を十分に理解したうえで、型にはめるのではなく、1つのアプローチがうまく機能しない場合には別の方法を考えるわけです。その中で大切なのは自分で判断すること、自動的にやることと考えてやることの判断が状況に応じて行えることです。
最近、児童思春期の精神医療においては発達障害や自閉症・高次脳機能障害を持つ子どもさんも増えてきています。いたずらに薬物を投与せずに、行動と学習を通じて、子どもの可能性を伸ばそうとする考え方も重要と思います。