持効性抗精神病薬(デポ剤)
- 2007.09.04
- 日記
これまで、当ブログでは、海外の抗精神病薬の利用状況についてアメリカのCATIE研究、ヨーロッパのSOHO調査について触れてきました。
http://www.bmj.com/cgi/content/full/bmj%3b333/7561/224
Tiihonen J,Walhbeck K,et al.:Effectiveness of antipsychotic treatments in a nationwide cohort of patients in community care after first hospitalisation due to schizophrenia and schizoaffective disorder: observational follow-up study.BMJ2006;333:224 (29July), doi:10.1136/bmj.38881.382755.2F
今回の論文はフィンランドでの初回入院患者の追跡調査です。この調査では、再入院率が低かった薬は、クロザピン、オランザピン、そしてペルフェナジンのデポ剤でした。もっとも使用頻度が高かったのはオランザピンでした。
デポ剤とは、1回の注射で2~4週間薬効が持続するというタイプの注射剤です。1度注射するとしばらく効いているので、アンダースタッフの日本の病院では「薬を飲まない患者」に対する処方と考えられがちです。今のところ、定型抗精神病薬のデポ剤しか日本では販売されていません。
本当は、抗精神病薬のデポ剤治療は、次のようなケースが好ましいとされています。
1.再発性の精神病症状があること
2.抗精神病薬による治療歴があること
3.治療者との間で治療を継続する意思がはっきりしていること
4.再発が怠薬に大きく関係していると思われるもの
つまり、医師、コ・メディカルと患者様の間で信頼関係があってこそのデポ剤ということになります。強制的な治療は入院中はできるかもしれませんが、外来では、薬を取りに来られるご家族に、ご本人の代わりに注射をしても意味はありません。特に、地域で訪問を含めた診療を展開していく場合には、適切な薬物治療の継続が非常に重要な位置をしめますので、今後、リスペリドンのデポ剤(すでにアメリカで発売されている)を含め、デポ剤の需要は増加していくと思われます。
デポ剤は現在のところデカン酸フルフェナジンとデカン酸ハロペリドールしか日本では使用できません。今後新規抗精神病薬のデポ剤が登場したとしても、使える種類が少ないですから、多剤併用療法にはなりにくいと思います。
デポ剤を使用することは、「薬を飲ませてください」と医者がご家族に責任を負わせることをやめることができますし、訪問スタッフが短い滞在時間を服薬確認で使ってしまうことからも開放されます。心理社会的治療を行っていくための時間的資源を創出するためにも、必要な治療法だと思います。
(wrote:財団法人 住吉病院)
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