触法精神障害者とIPS援助つき雇用

法務省では、罪を犯した人々の社会復帰と再犯予防に関しての総合施策において、無職の保護観察対象者の再犯率は有職者の再犯率の約5倍となっていることを指摘し、無職者による再犯が顕著な現状からすると、再犯防止のために就労の果たす役割は大きいとしています。

わが国の「医療観察法」では地域処遇についてのガイドラインはありますが、就労支援に関しては明確な方向性が提示されていないような気がします。しかし、精神疾患を有する方も、そうでない方と同様に再犯防止の観点から就労支援を利用することが意味を持つ場合もあるような気がします。

アメリカでは犯罪歴のある精神疾患を持つ方へのIPS援助つき雇用に関する研究もなされています。

Bond GR, Kim SJ, Becker DR, et.al.: A controlled trial of supported employment for people with severe mental illness and justice involvement. Psychiatric Services 66(10):1027-34, 2015

抄録をご紹介すると、筆者らは雇用は、重度の精神疾患を持つ人、特に刑事司法に関与している人々のコミュニティ生活への参加の鍵であるとし、重度の精神疾患を持つ人々が競争的雇用を達成するための科学的根拠に基づく実践(EBP)としてのIPSモデル援助付き雇用が逮捕歴や拘留歴のある重度の精神疾患を持つ人に有効かどうかについて、比較検討するための研究を行いました。
この研究では、無作為化比較試験では、重度の精神病をもち司法的関与を有する87人の参加者をIPSとピアサポート支援を伴う求人クラブアプローチを提供した比較グループに振り分けて、12ヶ月後に競争的雇用に関する成果を調べました。
1年間のフォローアップにおいて、IPSグループの参加者は対象グループよりも多くの割合で競争的雇用をに至っていました(31%対7%、p <.01)。入院率(51%対40%)や逮捕(24%対19%)または再投獄(両群とも2%)に関しては、フォローアップ期間中にIPSグループと対象グループの差は有意ではありませんでした。
結論としては、重度の精神疾患を持っている司法に関与されている人々が雇用を達成するためには、IPSが効果的なモデルであると示されていますが、その成果は従来のIPS研究のものに比べて控えめだったと彼らは述べています。
筆者らは結論として、精神疾患を持つ人々における司法的関与の割合を考えると、IPSの雇用スペシャリストは司法的関与のある個人との仕事における能力を高める必要があります。このグループの人々の雇用水準を高めるためには、連邦および州の法制度に対する変更だけでなく、IPSモデルのさらなる強化が必要になる可能性がある、と記載しています。

論文はこちらよりフリーでご覧になれます(pdfファイルです)
https://ps.psychiatryonline.org/doi/pdf/10.1176/appi.ps.201400510



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