Si puo fare!

 旧聞になりますが、10月に入ってのある好天の日、デイケアの仲間のみんなと、長坂で無農薬有機農法で米作りをされている方のお誘いを受けて稲刈り体験に行ってきました。

 田んぼには、あらかた刈り取られていた中に「皆さんに買ってもらう分を残しておきました」といってなかなかの量の稲が黄金色にこうべを垂れていました。

 現地の方に農器具の使い方について教えてもらい、今回はコンバインを用いずにバインダーで刈り取り、天日干しにこだわろう!ということになりました。

 私は稲刈りは高校の時分以来ですから40年以上ぶり、しかも鎌でしかやったことがありませんでしたが、デイケアの仲間の人たちは現地の方のマンツーマンでの指導によってすぐにバインダーを使いこなし、さくさくと稲刈りをしておられました。指導していただいた方々は、都会からリタイアされてこの地に来られ、農業を通して健康の回復や新たな生きがいを感じておられるとお話しくださいました。

 束ねられた稲束は天日干しします。うかがったお話では、刈り取ってそのまま籾にするコンバインでの収穫よりも、天日干しにしたほうがおいしいお米になるそうです。

 機械で稲を刈り取る人、稲束を運ぶ人、現地の方々から指導を受けてみんなで働きました。現地の方からは「誰が病いがあって、誰がスタッフなのかはわからないですね」と話していただけました。「こういうところで暮らしていると、人との間ですり減ってしまうことは少ないですよ」「また手伝いに来てください」とも。

 見上げれば台風一過の青空が広がり、実に広々とした風景です。建物もなく、もちろん精神病院や施設もありません。時間を区切る時計も、作業効率を図る測定器もありません。ここでは精神医療や福祉や、効率性の物差しを人に当てる必要はなくなっています。みんなで一緒に作業すれば、みんな同じ目的をもった仲間になれるのだと実感しました。そして、枠組みを超えようとしている我々こそがその枠組みの中から物事を考えているということにも気づかされました。

 イタリアでは1960年代から共同の暮らしと仕事の場(コムニタ)づくりが、当事者とそのご家族が支援者とともに広がりはじめ、やがて「社会的協同組合」が出現しました。
1980年代に入ると、「社会的排除との闘い」によって、社会から排除されてきた人々が自分たちの手で、「民主的な運営」「地域に根差した事業」「小まわりのきく規模」「ネットワークの拡充」の4点を共通のプリンシパルとした非営利的な事業として、「福祉的就労」を超えた経済主体としての活動が模索され始めました。
 さらに1991年の「社会的協同組合法」の制定によって、地域社会の中で、社会的困難を背負う人を含むあらゆる人々の「発達」と「参加」を保障していくこと、すなわち公益的性格づけがなされていることが社会協同組合の特徴となりました。
 この法律では協同組合は「A型社会的協同組合」と「B型社会的協同組合」が定められました。「発達」のために高度な「社会福祉、保健、教育サービス」を提供する協同組合が「A型社会的協同組合」、社会への「参加」保障のために「社会的不利益を被る者の就労を目的として農業、製造業、商業及びサービス業等の多様な活動」を担う協同組合を「B型社会的協同組合」として規定されています。

 公益財団法人としての弊法人は、すべての人へのぬくもりある活動を中心として、私たちらしい社会における「障害者」の役割を負わされた人たちへのサービス提供と、地域の人々との協働としての農業について考え始めようとしています。その第一歩として今回の体験は「参加」と「協働」の大切さをあらためて感じさせていただきました。

 帰り際にいただいた有機無農薬のお米を炊くと、今までにないうまみと甘さが一粒一粒の存在感と一緒に口に広がりました。

 「来年は一緒にもっと手広くやりましょう。」現地の方からかけていただいた言葉も素敵なお土産になりました。帰りの車中で、”Si puo fare!(やればできるさ!)”のフレーズを思い出しました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。