ハウジングファースト
- 2016.07.05
- 日記
「ハウジングファースト」とは,住まいを失った人への支援において、安心して暮らせる住まいを確保することを最優先とする考え方のことです。 この理念は、欧米のホームレス支援の現場では一般的になりつつあり,重度の精神障害を抱えるホームレスへの支援でも有効であることが実証されています。 しかし、日本では住まいの確保よりも生活訓練や就労支援等を優先するという考え方が根強くあるため、住まいのない高齢者や障害者の地域生活移行支援が進まない要因になっています。
弊法人ではIPS援助付き雇用の理念を取り入れた、それぞれの人の強みや興味を大切にした、障害者職業訓練を前提としない就職支援を行っています。まず個人がそれぞれの望む場所に身をおいて、その場所で支援することが効果的であるという実践研究にそれは、基礎をおいています。
精神科病院では、長く病院に留め置かれていた方々の地域移行支援が政策として進められていますが、なかなか成果が上がっていないという状況のようです。精神科病院が長期に在院されている方々を資産として囲っているという批判もあります。また、一方ではあまりに長く入院してしまった方が退院について希望の感覚を失ってしまっているという指摘もあります。
長く病院にいる方々は退院を望んでいるのでしょうか。病院の外の施設でまた暮らすことについて、ケア付き住居やグループホームの充実を望む声もあります。でも、病気になっていっとき入院した人は、「わが家に帰る」のが通常ではないのでしょうか。開放病棟で規則正しい生活をして、生活訓練をして、そのままの生活をわが家で行えるだろうと評価されてから、家に戻ることができる、というのは当たり前なのでしょうか。IPS援助付き雇用では、本人の意向に沿って個別に職を探し、本人が必要とする支援を、就職先で必要とされる期間提供することとしています。この考えで行けば、本人の望む場所に移ることを支援して、その場所で支援をしていく居住支援があってもいいのではないかと思います。開放病棟→退院支援施設→グループホームだけが退院の在り方ではないはずです。「退院しませんか」と「家に帰りませんか」では答えが違ってくることを経験しています。病院のそばやグループホームであっても、それはご本人の望む暮らしに向かっていることが重要な気がします。
海外では、たとえばPathwaytoHousingのニューヨークのホームレスにおける実践を皮切りに、フランスなどアメリカ外でもその有益性は認められ、IPSsupported employmentと同様にアメリカ連邦保健省薬物依存精神保健サービス部 (SAMHSA)の、科学的根拠に基づく実践プログラム (EBP;Evidence-Based Practices)1つにPermanent Supportive Housing があげられています。
http://store.samhsa.gov/product/Permanent-Supportive-Housing-Evidence-Based-Practices-EBP-KIT/SMA10-4510
わが国でも岡山や東京などでハウジングファーストの試みが行われています。それらは特別な地域のことなのでしょうか?いえ、違います。先日、岐阜で出会った人々は、相談支援と訪問看護ステーションに居住支援を一体化した法人の人でした。医療法人や社会福祉法人ではない株式会社として活動されているその人々からは実践者でしか発することのできないオーラが出ていました。そう、いろいろなところで素晴らしい人たちに出会ったときに感じる「枠組みのないところで活動をしている」人たちの素晴らしい実践を知る機会を得たのでした。
株式会社くらしケアのHPはこちら→http://kurashicare.com/
代表の方の、この活動にかける気持ちに感銘を受けました→http://kurashicare.com/company/
いつか甲府でもきっと、と強く思う出会いでした。
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。
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