精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律

来る4月1日より「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律」が施行され、今後の精神保健医療福祉の制度に変更が与えられることとなりました。

精神障害者の地域生活への移行を促進するため、精神障害者の医療に関する指針(大臣告示)の
策定、保護者制度の廃止、医療保護入院における入院手続等の見直し等を行う。

1.概要

(1)精神障害者の医療の提供を確保するための指針の策定
厚生労働大臣が、精神障害者の医療の提供を確保するための指針を定めることとする。
(2)保護者制度の廃止
主に家族がなる保護者には、精神障害者に治療を受けさせる義務等が課されているが、家族の高齢化等に伴い、負担が大きくなっている等の理由から、保護者に関する規定を削除する。
「保護者制度」が「家族等制度」に変わったわけではないことが重要なポイントです。一方で、医療保護入院は存続したので、精神保健指定医1名と家族等(配偶者、親権者、扶養義務者、後見人又は保佐人。該当者がいない場合等は、市町村長)の合意があれば、強制入院の類型である医療保護入院が可能となったことになり、このことは強制入院の合意をおこなえる者の範囲が拡大されて医療保護入院がたやすく行えることにつながる可能性があるため、人権擁護の対場からは異論が起こっています。

法改正に関わる検討チーム・作業チームでの議論では精神保健指定医1名の診断のほかに誰かの同意が必要ではないかとの意見がありました。すなわち、
・精神保健指定医1名の診断と同時に、別の精神保健指定医による診断が必要とする意見
 (すなわち、精神保健指定医2名による診断が必要とする意見)
・入院してから一定期間内に、別の精神保健指定医又は別の医師(病院の管理者等)による診断
・精神保健指定医1名の診断と同時に、地域支援関係者の同意又は関与を必要とする意見
・精神保健指定医1名の診断のほかに、裁判所による承認が必要とする意見

これらは今回持ち越しとなり、さらに、「検討チーム」の報告では、入院した人が自分の気持ちを代弁し、病院などに伝える役割をする「代弁者(アドボケーター)」を選ぶことができる仕組みを導入するべき、とされたが、今回の法改正には盛り込まれず、具体化に向けた調査・研究を行っていくことにとどまりました。

(3)医療保護入院の見直しについては、上記をうけて、
?@医療保護入院における保護者の同意要件を外し、家族等(*)のうちのいずれかの者の同意を要件とする。

のほかに
?A精神科病院の管理者に、
・医療保護入院者の退院後の生活環境に関する相談及び指導を行う者(精神保健福祉士等)の設置
・地域援助事業者(入院者本人や家族からの相談に応じ必要な情報提供等を行う相談支援事業者
 等)との連携
・退院促進のための体制整備
が義務付けられました。

改正法では、医療保護入院者を入院させている精神科病院の管理者は、精神保健福祉士その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、退院後生活環境相談員を選任し、その者に医療保護入院者の退院後の生活環境に関し、医療保護入院者及びその家族等からの相談に応じさせ、及びこれらの者を指導させなければならない。

退院後生活環境相談員の選任は義務であり、平成26年4月1日時点の医療保護入院者全員に選任されていることが必要です。

医療保退院後生活環境相談員として有するべき資格としては
?@精神保健福祉士
?A看護職員(保健師を含む。)、作業療法士、社会福祉士として、精神障害者に関する業務に従事した
経験を有する者

とありますが、
?B3年以上精神障害者及びその家族等との退院後の生活環境についての相談及び指導に関する業
務に従事した経験を有する者であって、かつ、厚生労働大臣が定める研修を修了した者(ただし、平成29年3月31日までの間については、研修を修了していなくても、前段の要件を満たしていれば、資格を有することとしてよいこととする。)となっています。

そして平成26年4月1日以降に入院した在院期間1年未満の医療保護入院者については、医療保護入院者退院支援委員会の開催を義務づけました。

?Bのスタッフについては、「ピアサポーター」を続けている方が精神保健福祉法における支援の枠組みに組み入れられたとみるべきか、「ピアサポーター」が活躍する可能性が広がったととるか・・・。厚生労働省の提供する研修の内容がどのようなものなのか、注目したいと思います。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。