回復するのに締め切りはありません
- 2014.02.08
- 日記
さる2月6日、山梨県精神障害者家族会連合会(しゃくなげ会)主催の夏苅郁子先生の講演会「今、求められる家族支援」が開催されました。講演開始時間には会場はぎっしりと埋まり、他の部屋から次々に椅子が運びこまれて、ご参加された方は当初の予想を大幅に超える130名となったそうです。
夏苅先生は、精神的な困難を得た方の子どもとして、苦悩の時期を過ごされた主体として、精神科医師としてのご体験を、会場の一人ひとりに語りかけるようにお話をしてくださいました。そのお姿を包むスーツは、今は亡きお母様が作られたものでした。
公表までの長い間、お母さまのことが負い目で、身を隠すように生きてこられたと夏苅先生はお話しされましたが、公表され、NHKのラジオ深夜便でマスメディアによってメッセージを発信されてから、大きく人生が変わられ、そして今は、これほど長期に患者さんの症状・生活に密着して追跡した精神科医は、居ないだろうと思われ、そうした経験を専門家として「誇りに」思えるようになり、家族としても「誇りに」思うようになったということです。
それとともに、患者の立場におられる人の「生活」を知ることの、大切さをあらためて思われて、「あなた病気の人、私治す人」では、治療はできないとお話しいただきました。
ご講演は予定時間を超えてお話しされ、先生ご自身とお母さまとの間からおこったさまざまな先生ご自身の中でのできごと、先生の出会った方々とのつながりのエピソード、これからわが国の精神医療を変えようという熱い思いに、私も含めて聴衆はみな吸い込まれるように聞き入りました。「家族にも人生がある」と強調され、ご家族が「支援者としての人生」だけを生きてしまわぬように語られ、ご自身のように縁を切ってしまうのは、一生の後悔となるとおっしゃいました。そして昨年浜松で開催されたACT全国研修会でのシンポジウムで語られた、これからの家族支援について触れられ、
まず、ケアしない権利を保護する
その上で、ケアする権利を保障する
これがないと、家族のリカバリーは起こりえない
この言葉を、40年前に聞きたかったとおっしゃいました。講演中、会場のあちらこちらですすり泣きのような声が漏れていました。
先生はご著書も持ち込まれ、サインを入れて実費でお配りされていましたが、用意された冊数はあっという間になくなりました。多くの人が、自分たちのこととして、制度を変えるための地道な取り組みをするためにさらにつながりあっていくことを強く望み、また、私も努力しようと思いました。
最後にお話しされた、今の夏苅先生を支えている言葉がこころに沁みこみました。
「人間は、必要とされると頑張れる」
「人が回復するのに締め切りはありません」
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。