考えない練習

小池龍之介著「考えない練習」小学館 を読みました。仏教の考え方から、自分自身をコントロールしたいと考えている人向けの、「考えない」ことについてとことん考えていこうとしている本のようでした。

人は自由に何かを考えているようでいて、いわゆる「考えすぎ」状態におちいってしまいがちです。心は常に刺激を求めているので、人は自分が主体的に「見たり聞いたり触れたりしている」つもりでも、脳は考えなくてもいいことを勝手にいろいろ考え出して「思い込み・自分勝手な考え(=妄想)」によって自分を苦しめたり、その人の本当の目的(夢や目標)に進むことの弊害を作り出してしまいます。ゆえに「考えなくてもいいこと」を考えない体質にして(できるだけ低刺激な生活のあり方をとって)心穏やかに前向きに日々過ごすために日頃から心がけたいことを解説している本なのだと思います。

勝手な考えは頭の中のノイズとなってメインメモリーを奪うため、外界の現実情報が入ってこなくなって実感が失われ、現実に直結しない妄想に耽って幸福感が損なわれ、「脳内ひきこもり」の状態になるという解説がわかりやすいものでした。

実生活で行動をしてながらも身体はその場になく、頭の中であれこれ考えていたら、それは内にこもっているのと同じなのだということです。心は、常に刺激を求めて暴走することを知り、その暴走をはじめるスイッチのひとつは、人に良く思われたいとか、プライドにしがみつく「煩悩」だということも知っておくとよいそうです。ちなみに「いい人と見られたい」のも煩悩・欲の一つです。そして心の暴走に振り回されないためには、感覚を研ぎすまし、「怒り」や「苦しみ」を「情報」にしてしまうことだそうです。

五感を集中させたり、自分の中に起こっていることを書きだしてみることでいったん落ち着かせて、無意識に動いてしまうことをいったんやめてみるということは、心理教育の場面でも重要に思っていることであり、セルフ・モニタリングと認知行動療法でも行われていることに近いと感じました。

ちなみに仏道において、人が幸せに生きて行くための感情は、「慈・悲・喜・捨」の4つだけということで、

慈=すべての生き物が平和で穏やかであることを願う感情
悲=悩みや苦しみがなくなることを願う感情
喜=他者の幸福を自分もともに喜べる感情
捨=怒りや迷いをなくし、平常心を保つ心の感情
だそうです。

思い込みを手ばなすこと、が仏教の世界でも重要なことと考えられているということが認識できる実践につながる本と思いました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。