当事者スタッフという立場3


の記事の続きです。

デイケアスタッフ(PSW)の感想:
感想

 精神科病院に通院して様々な思いを抱いてきた一人の人間として、私は「当事者」という表現を好まない。当事者サービス提供者というと、とても堅苦しいイメージを持つ。難しい説明は考えていないが、私は、経験を活かせる専門職、という表現が適切と考える。経験は絶対に活かせるものと確信しているので、経験から理解できて一緒に考えられる材料が多く、私にとっては強みとして定着している。

 セミナーの中で、ソロモン先生がアメリカでの事例を挙げて説明されていた。患者さんが、ケースマネージャーと仕事をしていて、夢や希望を語るようになった時、宇宙飛行士になりたいという夢は病気による妄想的な思いであると捉えられ、仕事を続けられなくなったというものである。3人目のケースマネージャーが思いを受け止めてくれて一緒に調べてくれて、宇宙飛行士は難しかったが関係機関で働けるようになったという。私はこれを聞いて、私がいつも抱いてきた思いと重なると感じた。

 病気はその人の一部であって、その人のすべてではない。病気だからという一言で思いを片付けられてしまうのは、とても悲しいことである。頭ごなしに否定されることがわかっていて、その専門家に相談しようとは思わない。病気の有無に関わらず、否定されて嬉しいと思う人はいない。相談して、否定されて疲れてしまっては、意味がない。私には、ずっと否定されて生きてきた経過があるので、人を否定することが嫌いであり、目の前にいる人の話を否定しないで聞いた上で、関わっていきたいと思っている。精神障害者には他の疾患をもつ方に比べ、排除されてきた長い歴史がある。でも、精神以外の疾患がある方も、通院して服薬して上手に調整しながら仕事や私生活を充実させている。私たちにも出来るはずである。誰にでも夢があり、希望がある。挑戦する過程を一緒に考えて一緒に取り組んで、私も勉強させてもらっている。その中でうまくいかないことがあっても、次に活かせるように経験したのであって、失敗ではない。経験して初めてわかることがある。失敗と捉えるより、活用できる引き出しの中身が増えたと捉えるほうが適している。どう活かしていくかはその人次第である。

 いつもここに述べた思いのもとに専門家として仕事をしているので、今回のセミナーでは、私自身が振り返りをして、再確認する場となった。私は病気をして、自尊心も自信もなくしてしまい、リカバリーする途中にいる。でも、経験を踏まえた対処方法を提案することができる。当事者と呼ばれた瞬間から、その人の持っている能力に対して、周囲から信念の欠如が感じられるつらい気持ちを感じてきた。また、一緒に考えて一緒にやってくれる精神保健福祉士の必要性も感じていた。様々な経験を踏まえた上で、チームの中で動くときには、チーム内外の専門家に彼らの視点を紹介し、伝えていくことができる。どのようなことも本人の言葉や表現には力がある。普段の関わりの中で、葛藤し、悩むことを繰り返しているが、いつか一人ひとりの能力や可能性に周りが気付き、認めていく環境になったら嬉しいと思う。そういった意味でも、日本の現状は、アメリカで研究が始まって当事者の能力や可能性を示してきた時期に重なっているように感じられた。これまで、私は経験や知識を活用して仕事をしていると思っていたが、今回のセミナーを通して、さらに経験から発展させた活動をしていきたいという思いを強くした。デイケアは、私が経験を活かす上で動きやすい場である。今後も、経験しながら頑張っていける人でありたい。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。