元気回復行動プランとエビデンス

Cook,JA, Copeland,ME et al.:Results of a Randomized Controlled Trial of Mental Illness Self-management Using Wellness Recovery Action Planning.Schizophrenia Bulletin
doi:10.1093/schbul/sbr012

を読みました。

この研究の目的は、医療的な通常ケアと比較してWellness Recovery Action Planning(WRAP)=執筆者によるとピア主導による症状管理介入法、の有効性を測定することだったそうです。この論文では、「介入」とか「改善」など、WRAPコミュニティの人たちと私が交流する際にあまり用いない言葉が使用されていますが、論文からのご紹介、ということでご容赦ください。
オハイオ地域で外来治療を受けている重症精神疾患をお持ちの方こ519名の方を無作為にWRAP介入群とウェイティングリスト(8週後にWRAP介入を受ける)群に振り分けたこの研究の主要な結果は、精神病症状が減少することであり、そして二次的には希望の感覚の高まり、生活(QOL)の質の向上を伴っていたということです。
これらの結果は、WRAP介入が精神症状を減らし、精神的な病をお持ちの方の希望の感覚を高め、時とともに時間とともにQOLを改善することを示しているそうです。このことは、ピア主導のウエルネス管理介入(例えばWRAP)の重要性がエビデンスに基づいたリカバリーを志向された部門のグループの一部であることを確かなものにする、とこの論文は結論しています。

ただ、結果を解釈するとき、研究の限界がいくつかあるとも述べられています。
たとえば、研究対象の方が、重症かつ持続性の精神病を持つ人の標準サンプルといえるかどうかはわからない、ということです。また、ウェイティングリスト対象者の状態を使用しているという研究方法にも注意が必要でしょう。そして研究の結果は、研究スタッフのような臨床医または客観的な観察者によって確証されていなかった当事者セルフ報告データに依存しているということで、今後、外部評価者と対照プラセボ介入を用いた前向きの研究によってWRAPの「有効性」についての厳密な評価が行われると思われます。ただし、WRAPとは呼べないが、精神的な病をお持ちの方の受ける良質なサポートもあるはずですから、他のピアサポートとの共通項について考えていくことも必要に思います。

これまでの研究結果は臨床家によって教えられる自己管理介入、たとえばIMR(Illness Management and Recovery)はエビデンスのある介入法であるとされてきました。今回は、このようなセルフコントロールのコツがピアの立場の方によってによって伝えられるとき、長期的な効果はよりよくなっていくのかもしれません。
自分の人生プランニング、セルフコントロールのスキルを作りあげること、社会的援助と自信の高まりに関するWRAPの焦点づけ、潜在的な能力を活性化する可能性があって、リカバリーにつながる、姿勢および行動の変化に対するモチベーションを強化する可能性があるとも考えられます。
WRAPや他のピア主導のプログラムのさらなる研究は、私たちに、精神的な困難を経験した方が自己決定と社会的な参加を再度活性化できるようになるために必要な要素は何かを抽出することによって、ピアの立場の方の成長に新たな方法を知らせることができるのではないかと思いました。
ただ、WRAPは本来医療の言葉によって語れるものではなく、医療そのものにとってかわるものではないこと、私のように、WRAPは「治療法」ではなく、「生き方」であると考えている方も多くあることは付け加えさせていただきたいと思いました。

最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。