IPSプリンシパルとエビデンス
- 2011.01.11
- 日記
IPS援助つき雇用(Individual Placement and Support / Supported Employment)は、重度の精神障害をお持ちの方が Competitive Employment (労働市場にある健常者と同じ職場に就職すること、とほぼ同義)を手にするための支援法として、ステップアップモデルのようなこれまでの方式よりも有効である、と主に北米を中心に発展している働くための支援方法の1つです。
エビデンスがあるとされているのは、IPSのオリジナルにある7つのプリンシパルを備えた支援が重度の精神障害(統合失調症圏・双極性障害・精神病性うつ病など)をお持ちの方に向けて行われた場合ですが、抗精神病薬の処方と同様に、エビデンスに基づかないIPSの定義や対象範囲の拡大などが問題とされている場合もあり、ヨーロッパでの無作為対照化試験EQOLISEでも、対照群との間に1日以上 Competitive Employment に到達した参加者数に有意差がつかなかった施設もありました。IPSの提唱者たちは現場で提供されているIPS援助つき雇用の内容がオリジナルから隔たっているもの場合にエビデンス通りの有効性が得られなくなると考えられてもいるようですが、これらの施設ではIPS援助つき雇用のアウトカムが各地域の就職や社会保障の制度による影響を受けることも一因とされています。ただし、私は個人的には平均値の差を有意差検定することが現場におけるエビデンス有無の決定のすべてではないと思いますが、有効性を主張するのであれば、それらについて他者が検証できるデータを示す必要があるとも考えています。
Bond, G. (2004) Supported employment: evidence for an evidence-based practice. Psychiatric Rehabilitation Journal, 27, 345359.では、IPSプリンシパルを次のように分類しています。
【高いエビデンスのあるもの】
・一般従業員と同じ職場での競争的雇用が第一の目標として焦点づけられること
・就職への適格性は、個々の選択に基づく
・迅速に職探しを行い職業教育前トレーニングは最低限にすること
【ある程度エビデンスのあるもの】
・支援プログラムが臨床チームに統合されていること
・クライアントの選択を重視すること
【低いエビデンスのもの】
・利益カウンセリングが提供されること
・サポートは、個々人のニーズに合わせて 無制限に利用できること
新しい Supported Employment Fidelity Scale はこのサイトにあります(英語です)→http://www.dartmouth.edu/~ips/page19/page21/files/se-fidelity-scale002c-2008.pdf
最後までお読みいただいた方、どうもありがとうございました。