HALT
- 2007.09.24
- 日記
当院はアルコ-ル依存症治療の専門病棟を持っていますが、アルコール依存症からの回復には、断酒を継続しなくてはなりません。しかし、いろいろな「ストレス」によってスリップ(再飲酒)してしまうことも少なくありません。
AA(アルコーリクス・アノニマス)中では、”HALTに気をつけろ”という忠告があるそうです。これは、しらふで生きようとした際に、飲酒衝動につながりやすいパターンを表現したもので、しらふでいるために、いかにこれらを遠ざけるかが重要です。
HALTとは:
Hunger:空腹
今までアルコールで得ていたエネルギーが入らなくなりますので、断酒者は空腹になります。体は何とかして失われたエネルギーを補いたいという欲求が起こるため、アルコ-ルの代わりのエネルギーを補給しなくてはなりません。したがって、空腹を放置したままにすることは、スリップを誘いやすいのです。また、からっぽになった感じはお腹だけではないかもしれません。愛情への空腹感にも注意が必要です。
Anger:怒り
怒りはストレスとしては強く、スリップにつながりやすくなります。アルコ-ルによって、爆発させた感情を一時だけ忘れたい、それが飲酒欲求となるのです。怒りの感情は素直に認め、それを仲間の中で語ることによって、肩の荷を降ろすことが重要です。ミーティングでの体験や気づきによって、怒りが解消されることもまれではないとされています。
Loneliness:孤独
孤独は怒りと同様に、危険な環境因子です。人は孤独であると寂しくなりますが、アルコ-ル依存症になる人達の多くがそうであるように、人との交流に苦手意識のある人は、対人交流がストレスになるために人が友達とはならず、酒が偽りの友となってしまうわけです。ここで重要なのが仲間の存在です。
Tiredness:疲労
精神的な疲労も肉体的な疲労もスリップにつながりやすいものです。アルコ-ルはわずかな間疲れを癒すと身体が学んできている場合が多く、頭ではよくないと知りつつも、体が学習していて疲れるとアルコ-ルがほしくなるメカニズムが形成されています。それは大変強力で、意志で対抗してもうまくいかないことが多い。「わかっちゃいるけどやめられない」になります。疲れを感じた場合には、とにかく危険から遠ざかることが必要です。
このHALTには、多くの回復者の方の知恵が詰まっています。そしてHALTに注意することは、実はアルコール依存症を持たない人たちにも、ストレスのコントロールや体調を管理する際の手引きとなるのではないでしょうか。
(wrote:財団法人 住吉病院)
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