Together standing tall

あの素晴らしかったワールドカップ2019日本大会はもう2年前になってしまいました。困難な年明けの中で、もう一度”ONE TEAM”について思います。

ワールドカップでは、ラグビーでは「所属協会」によって代表チームを編成します。つまり国籍が無くても(所属協会の)代表になれる、という不思議な(素晴らしい)伝統があります。無理解なマスメディアから「多国籍軍」と揶揄された一昨年の”JAPAN”も間違いなく私たちの代表であったことは皆さまもよくご存じのところでしょう。

しかし、国籍や紛争や宗教観を乗り越えて、ラグビー精神をよく具現化しているのはアイルランドラグビーユニオンではないかと思います。

アイルランドラグビーユニオンの創立は1879年(明治12年)ですが、その当時アイルランドはイングランドの植民地でした。1921年、アイルランド独立の際にプロテスタントが多いアイルランド南部3地域(レンスター、マンスター、コノハト)はカソリックの多い地域である北アイルランド(アルスター)と分離し、南部地域はアイルランド自由国(のち共和国)となり、北アイルランドは英国連邦に一地域としてとどまりました。アイルランドは分断されたのですが、その時ラグビーユニオンは分断されなかったのです。そして現在まで、アイルランドラグビー代表はアイルランド共和国と北アイルランドの代表チームであり、ラグビーアイルランド代表は「国」としてのアイルランドの代表ではありません。

一方でサッカーはアイルランド共和国代表と北アイルランドアイルランド代表は別のチームですが、これはサッカーとラグビーの政治的な思想が異なるわけではなく、サッカーの場合、それぞれの協会が独立時に北アイルランド地域にあったか、南にあったかの違いによるものだそうです。

1921年の独立から1999年のベルファスト合意まで、アイルランドはアイルランド島の統一を目指す人々と、英国への帰属を維持すべきという人々との間で長く、陰惨な対立を繰り返し、数多くの血が流れてきました。ちなみに昨年のワールドカップのアイルランド主将はローリー・ベストは北アイルランドの選手で、国籍は英国です。

アイルランド共和国の国歌は「Solder’s Song」ですが、これは英国と独立をかけて戦った兵士の歌ですので、北アイルランドの選手には抵抗があります。そのようなこともあり、ラグビーワールドカップでも1991年までは試合前の国歌を演奏はなかったのですが、1995年、アイルランド協会はラグビー協会のアンセム「Ireland’s Call」を世に出しました。素晴らしい歌だと私は思います。

Ireland’s Call

Come the day and come the hour
Come the power and the glory
We have come to answer
Our Country’s call
From the four proud provinces of Ireland

Ireland,
Ireland,
Together standing tall
Shoulder to shoulder
We’ll answer Ireland’s call

【ざっくり訳】
その日が来た、その時が来た
力と栄光がやってくる
我々はふるさとが呼ぶ声に応えるためにやって来た
4つの誇らしい地域からの

アイルランド!アイルランド!
ともに立ち上がれ誇り高く
互いに肩を組んで
我々はアイルランドの声に応える!

さまざまな困難の中で分断があおられています。私たちも今一度、すべての人により良い明日を目指すために団結することが求められています。それは為政者のいうことを素直に聞くこととはイコールではありません。誰が勝っており、だれが劣っているか、ということではないと思います。お互いがお互いを思いやり、ともに乗り越えるときなのだと思います。

皆さま、今こそ Together standing tall。ともに立ち上がりましょう。